こんどは社長が外のお客様を迎え、そのやりとりに聞き耳をたてはじめた。
先ほどの社員に「私の言う事がきけないなら辞めなさい!」というきついイメージからうってかわり
社長「お久しぶりです。お元気ですか?」とニコニコ顔で挨拶をしている、、、
人に辞めなさい!といったすぐあとにこんな笑顔になれるのか?とまず驚いた。
学生の素人が聞き耳をたてても、あまり正確には理解できていたとはおもわないが
このお客様が社長のOKをなにかもらいに来ているのはまちがいなかった
あとでわかったことだがCMの代理店さんで広告のコンテ(台本)の確認や広告するもの(媒体)の説明と確認だった
※「絵コンテ」とはCMのおよその映像内容が4コマまんがのように書かれていて「映像がどのように構成されるか」が手書きでかかれている
この当時はまだメールというものがなくFAXでやりとりをするのだが、たくさんの企画(CMのバージョン)数が多いときはかなりの枚数になるので、持参してもらい事前打合せをするのだ。
その持参されたプランを見るなり、社長のダメ出しがはじまった
※「ダメ出し」とは業界用語でここがダメ、これはなしとダメをいうことを属にダメ出しといい「あくまでよくするためのものであるが上の立場から下へすることが多い」
後で知るがこの社長は業界でも当時有名な「厳しい社長」で通った方である、みな会う人外部も内部関係者も「緊張を伴う人物」とされていた。
○○さん!まえにも行ったけど、、うちは○○はやらないの!と開口一番、広告媒体のなかの1つをダメといった!
これには、かなり、代理店の方も困っていた
代理店「申し訳ありませんが社長、、クライアントさんのかなり強いご希望で、、」
と口に仕掛けて時
社長は「一回OKにしたら、ずっとOKということになってしまうでしょ!かなり安っぽく見えるのよ!これは、、」
代理店「ええ、、、、そうなんですが、、」
その次にすごい言葉が社長の口からでたのだ
社長「うちは、吉永小百合さんがやらないことは、やらないの!」
この殺し文句を聞いたのは後にも先にもこの社長だけである。強烈に心に残る殺し文句である
代理店「わ、わかりました、、話してみます」
大手代理店の社員さんは東大、早稲田、慶応、京大、一ツ橋大学をでたいわゆるエリートの方たちであり、日本を代表する大会社の人でもある。
その方をこのように上からガツンと一言でねじ伏せる力がこの時のこの社長にはあるのだ。
東大VS芸能プロ社長はスターがいると社長に軍配があがるのか、、、とまたまた驚きを隠せなかった
代理店にかかわらずテレビ局の局員さんもみな一流大学卒の大企業のエリートサラリーマンであるが、スターを抱える事務所の人間にはみな低姿勢に接するのをその後知ることになる
もちろん面従腹背的にその場しのぎではあるのだが、この時、1995年当時、時代のスターのギャラはかなり高く、スター一人で一人が5億から10億近く年商を上げている時代の力は絶対的であった。
芸能プロダクションとスターがまだ力を持っていた時代。
会社の実地試験にきている売れないバンドマンくずれのNにとって、小さいプロダクションでも社長の力はここまですごいのか!ということを生で体感したのだ
「THE 芸能界」を知った初日である
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