名古屋まではグリーン車で特に問題はない、想定どうり駅弁とはいえ、食事もとれた、問題は「近鉄特急」での2時間半だな、、、今回の旅の最大の難所である
何しろ席が狭い、持病の「あしのしびれ」をなんとか夕方6時半からの講演にでないようにしたい
①まず、スリッパに履き替えさせる
「Yさん、道中ながいですので、革靴は血行が悪くなりますから、これをはいてください」
Yさん「おお、ありがとそうするよ、、」と素直にはいてくれた
②次に「背中が痛くなるといけないのでこれつかってください」と、用意した毛布を渡すが、この日たまたま暑い日というのもあり、
Yさん「いま、なんだか、、あつくてな、、、」ととりあえず横においたまますする
③首ラクッションは「ははは、これはおかしいだろ、、と笑い」却下、取り急ぎ私Nのささやかな誠意は伝わったようだった
初めが肝心なので、とりあえずスリッパだけでもよしとしよう、、、ほんとは、スラックスからジャージに着替えさせたいのだが、そこは
「昭和の大物俳優」、、握手を求められれば、常に「役者Y」にならなければいけない、、下半身がジャージではいけないのだ
まずは「津」駅までで1時間、、、問題はそっからだな、、、と
「津」をすぎると、列車には人がどんどんいなくなっていく、「握手してください」とか言われる心配が減るので普段なら安心する時間なのだか
ふと、見るとYさんは左足をときより、よじったり、太ももをさすったりしている、、「きてしまったな、、まだあと1時間以上あるのに、、」
今回、1番いいのは「前乗り」する方がいいのはわかっていた
「前乗り」とは業界用語で(前日乗り込み→仕事場に前日に泊りでいってしまうこと)
ただ、その場合、当日の講演時間後には列車がなく、2泊3日になってしまうのだ、しかも公演は夕方6時半、日中観光でもしたいならまだしも、港と海以外はあまりなにもない場所と窓口の人間から聞いていたし、本番前に足つかれさせるわけにもいかない
Yさんも「大丈夫だ、、」といっていたが、やはり、今まさに大丈夫ではない方向に状況は傾いていた
しかし、この列車は降りれない理由がある。私Nは正直に言った「Yさん、ご存じだとおもいますが、あと1時間ぐらいかかります、、、申し訳ございませんが、この列車を途中下車すると、、、2時間1本しかないので、、講演開始時間には間に合わなくなってしまうのです、、足をさすりましょうか?」
と申し訳なさそうに言うと
Yさん、「いや、だいじょうぶだから、、、うん、、、しかたないだろ、、、うん、、、けっこうかかるんだな、、、」と真剣な表情でいった、、、かなりしびれがきつくなってきたのだろう
私Nも長年Yさんに付いていたマネージャーなら、「ここはジャージに着替えましょうよ!」とかぐいぐい近い砕けた話ができるのだか
いかんせん、先日からのお付き合いでマネージャーでもない、、、プライドにさわって「本番前に機嫌でも悪くされたらかなわない、、」
さすがに、いいアイデアも浮かばず、飲みものをもってくるぐらいしか、気の紛らわし方もない
先のことに頭をまわすとまず、90分の講演を立ってやるのは無理だ、、、私Nはこのタイミングだとおもい
私N「Yさん、今日の講演ですが、頭から椅子にすわってやりましょう、、、心配なので、先方にそれで伝えてよろしいですよね?」と聞くと
Yさん、「いや、立ってやるよ!、この狭い態勢だからなるんだ、、、降りれば治るから、、大丈夫、立ってやる、、」
私Nはびっくりしてしまった、今までは「ああ、、そうだね、、」という返事がきそうに、足をさすっていたのに、急に真顔で否定した、、
私N(心の中)「まずい、、地雷をふみかけた、、、」とおもった
何しろ大物俳優でもYさんクラスはまず、第一は「プライド」なのだ
往年の昭和の大スターが、緞帳(幕)があいて椅子に座ってしゃべるなんて「年寄りくさい」イメージを瞬時に拒絶したのだ、、
その後、なかなか、アイデアもなく、時間は過ぎていき、なんとかあと15分で目的の駅に到着する時間となった
コメント